断面一次モーメントとは、断面の形状と重心位置を把握するための力学的な量です。
図心(断面の重心)を求める際に必ず使用する概念であり、構造力学の基礎として施工管理技士試験でも出題されます。
計算の流れと公式を整理して理解しましょう。
断面一次モーメントとは
断面一次モーメント(Sx、Sy)とは、ある軸(基準軸)から断面の各微小面積までの距離に、その微小面積を掛けて積分した値です。
単位は「長さの3乗(mm³、cm³)」で表されます。
数学的には次のように定義されます。
x軸に関する断面一次モーメント:Sx = ∫y・dA
y軸に関する断面一次モーメント:Sy = ∫x・dA
ここでdAは微小面積、y・xはその微小面積の基準軸からの距離です。
断面一次モーメントと図心の関係
断面一次モーメントの最も重要な使いみちは、図心(断面の重心)の位置を求めることです。
図心座標(x̄, ȳ)は次の式で求められます。
ȳ = Sx / A (x軸からの図心距離)
x̄ = Sy / A (y軸からの図心距離)
※A:断面積
また、図心を通る軸に関する断面一次モーメントは必ず0になるという重要な性質があります。これは試験で問われることがあるため、必ず覚えておきましょう。
矩形断面の断面一次モーメント(公式)
実務・試験でよく使う矩形(長方形)断面の断面一次モーメントを求めてみましょう。
幅b、高さhの矩形断面で、底面を基準軸(x軸)とした場合:
Sx = b × h × h/2 = b・h²/2
図心はx軸からh/2の位置、つまり断面の中央にあることが確認できます。
複合断面の断面一次モーメントの求め方
T字形やL字形など複雑な断面は、単純な矩形に分割して計算します。
各部分の断面一次モーメントの和が複合断面全体の断面一次モーメントになります。
S全体 = S₁ + S₂ + S₃ + …
各部分:Sᵢ = Aᵢ × yᵢ(Aᵢ:各部分の面積、yᵢ:基準軸からの各部分の図心距離)
計算例:T字断面の図心を求める
フランジ(上部):幅200mm・高さ50mm、ウェブ(下部):幅50mm・高さ150mmのT字断面を例に、底面を基準(x=0)として図心を求めます。
| 部分 | 面積A(mm²) | 図心距離y(mm) | Sy = A×y(mm³) |
|---|---|---|---|
| フランジ | 200×50 = 10,000 | 150 + 25 = 175 | 1,750,000 |
| ウェブ | 50×150 = 7,500 | 75 | 562,500 |
| 合計 | 17,500 | ― | 2,312,500 |
図心位置 ȳ = 2,312,500 ÷ 17,500 ≒ 132mm(底面から)
断面一次モーメントの性質まとめ
- 正・負の値をとる(基準軸の上側が正、下側が負)
- 図心を通る軸に関する断面一次モーメント=0
- 単位はmm³またはcm³
- 断面二次モーメントとは異なる(混同しないこと)
断面一次モーメントと断面二次モーメントの違い
| 比較 | 断面一次モーメント | 断面二次モーメント |
|---|---|---|
| 定義 | ∫y・dA | ∫y²・dA |
| 単位 | mm³(長さの3乗) | mm⁴(長さの4乗) |
| 用途 | 図心の計算 | 曲げ剛性・たわみの計算 |
| 図心軸での値 | 0 | 最小値(正の値) |
施工管理技士試験のポイント
- 断面一次モーメントの定義と単位(mm³)
- 図心座標の求め方(ȳ = Sx / A)
- 図心軸に関する断面一次モーメント=0
- 複合断面の図心計算(分割して足し合わせる)
- 断面二次モーメントとの混同に注意
まとめ
断面一次モーメントとは、基準軸から断面の微小面積までの距離×面積を積分した量で、図心位置を求めるために使います。
複合断面では各部分に分割してS=A×yを計算し合計します。
図心を通る軸では断面一次モーメントが0になることは試験頻出の性質です。
断面二次モーメントと混同しないよう、定義・単位・用途の違いをしっかり整理しておきましょう。


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