環境工学とは、気温・湿度・日照等、建築物に影響のある自然に関することを学ぶものです。
環境工学は人々の生活に密接していて、建築学の重要な部分の一つと言えます。
環境工学-2級建築施工管理技士試験の対策
環境と言っても、気温、湿度、日照、熱、換気、音、色と様々な要素があります。
かなりのボリュームで覚えることもたくさんのあるので結構大変な項目と言えます。
日照
日照とは、地表面に直接日光が当たっている状態のこと。
居住用の建物ではできる限り多くの日照を確保するような計画を立てます。
日照にもいくつか用語がありますので、その解説です。
- 日照時間:実際に日照があった時間。天気や太陽の位置によって変わってきます。
- 可照時間:晴れた日の日照があるべき時間。通常、日の出から日没までの時間を言います。
- 日照率 :可照時間に対する日照時間の比で示され、日照のあった割合を表します。
日照率は
日照時間/可照時間×100%
で計算します。
隣棟間隔(りんとうかんかく)
隣棟間隔(りんとうかんかく)とは、十分な日照や採光を得るために確保する建物と建物の間隔のことです。
隣棟間隔は、日影を考慮し、南側の日影を生じさせる建築物の一番高い高さに、前面隣棟間隔係数を乗じることで計算できます。
日射
日射とは、地表に達する太陽の放射エネルギーのことです。
日射にも直達日射と天空放射があります。
日射の中では以下のような言葉が使われます。
- 日射量:単位面積が単位時間に受ける日射
- 直達日射量:太陽光が地表面に直接達した日射量のこと
- 天空放射量:太陽光が途中で乱反射されて地上に達した日射量のこと
- 全天日射量:直達日射量と天空放射量を合計したもの
大気の透過率が高くなるほど、直達日射は強く、天空放射は弱くなります。
曇天の日には天空放射のみとなります。
直達日射量の量は、
- 夏季:水平面→東・西面→南面→北面
- 冬季:南面→水平面→東・西面
の順で大きくなります。
北面は、冬季は直達日射がなく天空放射のみです。
東面と西面は、季節にかかわらず直達日射量が等しくなります。
南面の直達日射量は、夏季に少なく冬季に多くなるという傾向があります。
採光
採光とは、日中に太陽によって照度を取りいれるものです。
照度を得るための方法には、昼間の太陽によって照度を得る採光と、人工の光源により照度を得る照明の2つがあります。
照度などの単位には以下のようなものがあります。
- 照度:ルクス(受照面の単位面積当たりに入射される光束の量のこと)
- 光束:ルーメン(光源から放射される光の明るさのこと)
- 光度:カンデラ(光源からの光の強さのこと)
- 輝度:cd/m2(ある方向から見た受照面の光の強さのこと)
ちょっとわかりづらいかもしれませんが
- 光度は光源
- 照度は受照面の明るさ
- 輝度は受照面の光の強さ
と覚えておくとよいです。
また、光にも以下のような呼び方があります。
- 太陽の光:昼光
- 直射する日光:直射光
- 空の明るさ:天空光
さらに光や照度に関する言葉として以下のようなものがあります。
全昼光:直射光と天空光を合計したもの。
全天空照度:全天空が望める場所で、直射光の照度を除いた水平面照度のこと。
昼光率:室内のある点の照度とそのときの全天空照度との比。採光による室内の明るさを表します。
昼光率=室内のある点の照度/そのときの全天空照度X100 (%)
均斉度:昼光による照度分布の均質性を示す指標のこと。天井を高くし、窓の位置をできるだけ高い位置に設定することで、均斉度を上げることができます。
均斉度=最低照度/最高照度
照明
照明とは、人工光源(照明器具等)を用いて照度を得ることです。
自然採光は天候に左右されますが、照明は一定の明るさを保ちやすくなります。
人工光源は、色温度が高くなるほど青味がかった光色となり、色温度が低いと赤味がかった光色となります。
蛍光灯は白熱灯に比べ、消費電力は少なく、寿命は長いですが、演色性は悪くなるという特徴があります。
直接照明の陰影は、間接照明等による陰影よりも濃くなります。
光天井照明は、室内の照度分布が均等になり、照明による影がやわらかくなります。
全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明の照度は、局部照明による照度の1/10以上とするのが望ましいとされています。
作業面上を照らすタスク照明(作業照明)と周囲の明るさをカバーする照明(周囲環境照明)を併用するタスク・アンビエントの照明もあります。
熱
熱が高温部から低温部に移動することを伝熱と言います。
伝熱には、
- ふく射:ある物体から熱が電磁波の形で放射され伝わる現象
- 対流:流体内に温度差が生じ、流体が移動することによって、熱が伝わる現象
- 熱伝導:固体内部で熱が高温部から低温部へ移動する現象
の3形態があります。
伝熱や熱伝導に関しては、熱伝導率、熱伝達率など、さまざまな要素が関係しています。
熱に関する用語がありますので、説明します。
- 熱伝達:固体からその表面の流体へ、または流体から固体表面へ熱が移動すること
- 熱伝達率:熱の伝達のしやすさを示す値のこと。例えば、壁の熱伝達熱伝達率1率は、壁面に当たる風の風速が速くなるほど大きい値となる。単位は[W/m・k]。
- 熱伝導率:熱伝導の程度を表し、熱の伝わりやすさを示す値のこと。熱伝導率1熱伝導率は、温度が高いほど、含湿率が大きいほど、また、密度が大きいほど大きな値となる。単位は[W/m・k]。
- 熱伝導抵抗:伝導のしにくさを示す値のこと。熱伝導率の逆数で表す。
- 熱貫流:壁体を挟んだ両側の空気に温度差がある場合、高温部から低温部ヘ熱が通過する現象のこと。
- 熱貫流率:壁等の熱の通しやすさを示す値。熱貫流率が小さいほど断熱性能は高くなる。
- 熱貫流量:壁面の熱貫流率・室内外の温度差・面積に比例する。
- 熱貫流抵抗:熱貫流のしにくさを示す値。熱の流れを妨げようとして作用する抵抗
- 熱容量:ある物体の温度を1ケルビン上げるのに必要な熱量。
- 熱損失係数:建築物の断熱性能を表したもの。値が小さいほど断熱性が高い
なお、壁などの内部に空気層(中空層)を設ける場合、厚さが20-30mm程度までは断熱効果が高まりますが、それ以上の厚さになると空気層内で対流が生じ、断熱効果が悪くなるので注意が必要です。
結露
結露とは、空気が露点温度以下の壁体や窓等の物質に触れて冷やされ、空気中の過剰な水蒸気が凝縮して霧となる現象のことをいいます。
また、表面結露と内部結露があります。
- 表面結露:壁や窓等の表面に発生する結露のこと
- 内部結露:壁体の内部に発生する結露のこと
それぞれの対策は以下の通り
- 表面結露の対策:断熱性をよくして、室内側の表面温度を高くするか、室内換気を行い、必要以上に水蒸気を発生させないようにする
- 内部結露の対策:断熱材より室内側に防湿層を挿入するか、外断熱工法とする。防湿層は外壁側だと内部結露するので、必ず断熱材の室内側に設置します。
結露が起こりやすい場所は以下のようなところです。
- 壁の隅角部
- 押入れ
- 家具の裏側
- トイレ
- 浴室
- ヒートブリッジ:躯体を構成する部材のなかで、断熱材を他の材料が貫通することにより、熱が橋を渡るように伝わりやすくなってしまう部分のこと
このような部分に断熱材をいれて結露を防ぎます。
湿り空気中の水蒸気量とその温度における飽和水蒸気量を比で表したものを相対湿度、湿り空気中の水蒸気と乾き空気の重量の割合を表しとものを絶対湿度といいますので、覚えておきましょう。
換気
換気とは、室内の空気環境の維持または改善を目的として室内の空気を排気、そして、外気を吸気することをいいます。
換気には、
- 全般換気:室内全体の空気を外気によって希釈しながら入れ替える
- 局所換気:汚染物質の発生場所近くで換気すること
があります。
また、換気には以下のような用語があります。
- 換気回数(回/h):部屋の空気が1時間当たり何回入れ替わるかを示す値のこと
- 必要換気量(m3/h):室内の空気環境を環境衛生上適正に保つために必要な外気導入量のこと
必要換気量は
必要換気量(m3/h)=換気回数(回/h)X部屋の容積(m3)
で求められます。
参考として、人は一般に毎時20から30m3の換気量を必要としています。
二酸化炭素の濃度
室内空気の二酸化炭素(CO2)の濃度は、室内空気の汚染を評価する指標とて使われています。
在室者の呼吸による必要換気量=在室者のCO2発生量/(室内のCO許容濃度-外気のCO2濃度)
- 二酸化炭素(CO2)の含有量の環境衛生管理基準値:1000ppm (0.1%)以下
- 一酸化炭素(CO)の含有量の環境衛生管理基準値:10ppm (0.001 %)以下
換気に関する用語として以下のようなものがあります。
- 空気齢:空気が流入口から室内のある点まで到達するのに要する時間のこと
- 全熱交換器:換気によって失われるエネルギーの全熱(空気の温度と湿度)を交換回収する省エネルギー装置のこと
自然換気と機械換気
換気の方法には、風力などの自然の力を利用する自然換気と、ファンなどを使用して強制的に換気を行う機械換気があります。
自然換気には
- 風力換気:風上と風下との圧力差により換気が行われ、換気量は、風速及び開口部の面積に比例します。
- 重力換気:室温が外気温より高い場合、下方の開口部より屋外の重い(冷たい)空気が流入し、上方の開口部より室内の軽い(暖かい)空気が流出します。換気量は、開口部の面積に比例し、内外の温度差、上下の開口部の垂直距離の平方根に比例します。
があります。
なお、室内の空気圧が室外の大気圧と同じになる垂直方向の位置を中性帯といい、この部分に開口部を設けると換気効果は低下します。
機械換気方式には
- 第一種換気方式
- 第二種換気方式
- 第三種換気方式
の三種類があります。
音の性質
音は、周波数が高い (振動数が多い)音は高い音に聞こえ、周波数が低い(振動数が少ない)音は低い音に聞こえるという性質があります。
音波が伝搬するとき、物質内のある点が受ける微小な圧力変動を音圧といい、デシベル[dB]で表示したものを音圧レベルといいます。
音の強さは、点音源からの距離の2乗に反比例して減少し、距離が2倍になると6dB減少します。
また、同じ音圧レベルの音が2つ加わると、音圧レベルは約3dB大きくなります。
- 干渉:複数の音波が同時に存在すると、それぞれの音波が、互いに打ち消し合い小さくなったり重なり合い大きくなったりする現象のこと
- 回析:音が建物や塀などの障害物の端を通過して、それらの背後に回りこむ現象のこと
周波数の低い音(波長の長い音)ほど、回析が起こりやすくなります。
- マスキング効果:同時に異なる音が存在し、小さな音が大きな音に打ち消されて聞こえなくなる現象
- カクテルパーティー効果:カクテルパーティーのように大人数が談笑している騒がしい状況でも、自分の名前や興味ある内容等の必要な情報が聞き取れる現象
などがあります。
吸音・遮音
- 吸音:入射音を吸収または透過させて音の強さを弱めること
- 遮音:壁等で遮断することにより、音を透過させないこと
吸音率の計算式
吸音率=(吸収音エネルギー+透過音エネルギー)/入射音エネルギー
- 高音域の音の吸収には、多孔質吸音材料
- 低音域の音の吸収には、板振動型吸音材料
透過損失:入射音と反射音の差をdBで表示し、壁の遮音性能を示す
透過損失は、単位面積当たりの質量と1周波数の積の対数に比例するため、壁材の密度が大きいほど、壁が厚いほど、入射音の周波数が高いほど、透過損失の値は大きくなります。
残響・反響
- 残響:室内の音源が発音を停止してからもしばらく連続的な反響が聞こえてくる現象のこと。
- 残響時間:室内の音源が発音を停止してから、残響音が60dB減衰するのに要する時間のこと。
残響峙間は室容積に比例し、室内の総吸音力に反比例します。 - 明瞭度:音声の聞き取りやすさを示す指標の1つで、85%以上なら良好とされています。
明瞭度を確保すべき講演を主とする室の最適残響時間は、音楽ホールに比べて短くなります。 - 反響(エコー):音波が壁等の物体に衝突し跳ね返ってくる現象のこと。
直接音から1/20秒以上遅れて大きな反射音があると、音が二重に聞こえます。 - フラッターエコー:反射性の壁体などが向き合い、音がこの壁体間を往復し、二重、三重に聞こえる現象のこと
- コインシデンス効果:入射音波とガラスのような板材との共振により、遮音性能が低下する現象
騒音
騒音は、
- 空気伝搬音
- 固体伝搬音
とに分けられます。
騒音レベルは、一般に普通騒音計のA特性で測定した音圧レベルで表され、騒音レベルによる許容値は、一般に図書室(45dB)より住宅の寝室(40dB)ほうが小さくなります。
騒音の感じ方は音の高低によって異なり、同じ音圧レベルの音でも高音のほうが低音よりうるさく感じます。
NC曲線(推奨騒音基準曲線):騒音の高低差による影響を考えて、推奨値を周波数の範囲ごとに規定したもの
NC曲線より求めたNC値が小さいほど静かに感じます。
参考NC値
- 20から30:非常に静か。大会議可能
- 30から35:静か。会話距離10m
- 35から40:会話距離4m。電話支障なし
- 40から50:普通会話距離2m。 電話少し困難な時あり
- 50から55:やや大声で会話距離2mまで。電話少し困難で会議には不適
- 55以上:非常にうるさい。電話不可
色の性質
色がもつ特徴、色に関する用語についての解説です。
- 無彩色と有彩色がある
- 無彩色は、明度だけもつ色(黒、灰、白)のこと
- 有彩色は、色味のある色(赤、青、緑など)のこと
- 有彩色の色を特性づける性質を色相、色の明るさの度合いを明度、色づきの鮮やかさの度合いを彩度という。
- 色の温度感覚には、暖色と寒色と、それらに属さない中性色がある。
- 色相の異なる色を並べると、互いに反発しあい色相が離れた色に見えることを色相対比という。
- 異なる明度の色を組み合わせたとき、明度の低い色はより暗く後退して縮んで見え(後退色)、明度の高い色はより明る<進出して膨張して見える(進出色)ことを明度対比という。
- 異なる彩度の色を祖み合わせた時、彩度の低い色はより低く、再度の高い色はより高く見えることを彩度対比という。
- 補色関係にある色を並べると、互いに彩度を高めあって、鮮やかさが増して見えることを補色対比という。
- 色は面積が大きいほど、明度と彩度が増加して見え、これを面積効果という。
- 彩度は、背景の彩度との差が大きくなる方向に変化して見える。
- 1つの色相のなかで彩度の1番高い鮮やかな色のことを純色という。
- 純色に白または黒を混色してできる色のことを清色という。
マンセル表色系
マノセル表色系では、色彩の基本として色相・明度・彩度の三要素で表し、これを具現化したものをマンセル色立体といい、すべての色を三次元空間に配置したものとなります。
色相については、基本の5色相「赤」「黄」「青」「緑」「紫」に、中間色の5色「黄赤」「黄緑」「青緑」「青紫」「赤紫」を加えた10色相を環状に等間隔に配置しています。
明度については、純黒を0、純白を10として、その間の明度をl、123・・で表し11段階に尺度化しています。
彩度については無彩色を0として、彩度を1、2、3・・と区別しますがその段階は色相によって異なり、赤が最も多く、青が最も少なくなります。
マンセル色相環において、向かい合う位置にある2色の関係を補色といい2色を混ぜると無彩色になります。
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