今回は鉄骨構造についての内容です。
鉄骨構造は、その名のとおり、鉄骨で構成される構造のことです。
鉄骨構造はよく鉄筋コンクリート構造と比較されるので、鉄筋コンクリートとの対比でみてみます。
鉄骨構造は、鉄筋コンクリート構造と比べると、次のような特徴を持っています。
- 工場で加工することが多いため、現場作業が軽減する。
- 構造体の軽量化が図れる。
- 骨組の変形能力が大きい。
- 自重(じじゅう)が小さいので、建築物に加わる地震力が小さくなる。
- 固定荷重に対する積載荷重の比率が大きい。
- 鋼材(こうざい)は不燃材(ふねんざい)だが、耐火被覆(たいかひふく)がない場合は、十分な耐火性能がない。
以上が鉄筋コンクリートとの大きな違いになるのでよく覚えておきましょう。
鋼材
鋼材は強度や靭性(じんせい)が大きく、部材断面を小さくすることができますが、細長い部材や薄い部材は座屈(ざくつ)しやすくなるため、施工にあたっては、座屈を考慮しなくてはなりません。
鋼材の引張り強さは含まれる炭素量によって異なり、一般に炭素含有量が0.8%前後のときに引張り強さは最大となります。
引張材としての鋼材ではボルト孔(こう)などの断面欠損(けっそん)があると、その部分の鋼材の断面積が減少して部材としての耐力(たいりょく)に影響します。
鉄骨造柱梁接合部(てっこつぞうはしらはりせつごうぶ)
鉄骨造の柱梁(はしらはり)の接合部には以下のような種類と特徴があります。
- ウェブプレート:H型鋼(エイチがたこう)の腹部にあるプレートで、主にせん断力を負担する。
- フランジプレート:H型鋼(エイチがたこう)の断面で上下の張り出しているプレート。主に曲げモーメントを負担する。
- スカラップ:溶接線の交差による割れ等の溶接欠陥(ようせつけっかん)や材質劣化(ざいしつれっか)を防ぐために、一方の母材(ぼざい)に設ける扇型(おおぎがた)の切り欠きのこと。
- スチフナー:主にウェブプレートの座屈(ざくつ)防止として用いられる鋼板のこと。
- ダイヤフラム:梁(はり)の応力(おうりょく)をスムーズに柱に伝え、接合部を補強するための補強材をいい、鉄骨柱(てっこつばしら)と梁との接合部に用いられる。
- フィラープレート:厚さの異なる板を高カ(こうりき)ボルトなどで接合する際、板厚(いたあつ)の差をなくすために挿入するもの
- スプライスプレート:継手(つぎて)部分に使用する鋼板の添え板(そえいた)のことで、添え板やジョイントプレートともいう。
高力(こうりき)ボルト接合
高力ボルト接合には、
- 摩擦接合(まさつせつごう)
- 引張接合(ひっぱりせつごう)
- 支圧接合(しあつせつごう)
などがあります。
一般には摩擦接合が用いられることが多いです。
高カボルト摩擦接合は、接合部材を高張力の高カボルトで締め付け、接合部材間に生じる摩擦力により応力を伝達させる接合方法です。
小規模建築物(軒高9m以下、張り間13m以下、かつ延ベ面積3,000m2以下)では、ボルトが緩まないようナットに溶接したり、ナットを二重にするなどの戻り止めの措置を講じれば、構造耐力上主要な部分の接合を普通ボルト接合とすることができます。
高カボルト摩擦接合には以下のような特徴があります。
- 摩擦面のすべり係数は0.45以上とする。
- 摩擦面は、赤錆状態またはショットブラスト等の表面処理を行う。
- 高カボルト相互間の中心距離は、その径の2.5倍以上とする。
- 二面摩擦の場合、許容せん断力は一面摩擦の2倍になる。
- せん断力のみが作用する場合、繰返し応力による影響を考慮しない。
- せん断力と引張力が同時に作用する場合は、許容応力度の低減を行う。
- 高カボルト摩擦接合とする場合、接合部材の断面性能にはボルト孔による断面欠損を考慮する。
溶接
溶接する箇所を溶接継目といい、溶接継目には、以下の種類があります。
- 突合せ溶接(完全溶込み溶接):突合せた母材に開先を作り、そこを溶着金属で埋めて接合する溶接継目。十分な管理が行われている場合、その許容応力度を接合させる部材の許容応力度とすることができます。余盛りは、応力集中を避けるため、滑らかに仕上げることが重要です。
- 隅肉溶接:隅角部に溶着金属を盛って接合する溶接継目。接合する母材間の角度が60度以下、または120度以上である場合には応力を負担させてはいけません。また、隅肉溶接の有効長さは、溶接の始端から終端までの長さから隅肉サイズの2倍の長さを控除した長さとなります。
- 部分溶込み溶接:接合部の全断面ではなく、部分的に溶け込ませて接合する溶接継目。せん断力のみを受ける場合に使用でき、溶接線と直角方向に引張力を受ける場合や、溶接線を軸とする曲げを受ける場合には使用できません。また、繰返し応力を受ける箇所にも使用できません。
継手(つぎて)、柱脚(ちゅうきゃく)
併用継手(へいようつぎて)とは、高カボルト接合と溶接接合を併用する継手です。
併用継手の場合、応力を受けることができるのは、溶接と先に施工された高カボルトで、高カボルトが後に施工された場合は、溶接のみで応力を受けます。
鉄骨造の柱脚は、
- 露出柱脚
- 根巻き柱脚
- 埋込み柱脚
に分類できます。
柱脚の固定度は、高い順から、
- 埋込み柱脚
- 根巻き柱脚
- 露出柱脚
となっています。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、その他の構造
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、鉄骨造(S造)と鉄筋コンクリート造(RC造)の合成構造です。
鉄筋コンクリート造に比べ耐震性があり、鉄骨造に比べ耐火性があります。
免震構造は、地震入カエネルギーを吸収しようとする機能(吸収機能)と鉛直荷重を支えつつ地震による水平方向の力から絶縁しようとする機能(絶縁機能)をもつ構造です。
絶縁機能のことをアイソレーター(支承体(ししょうたい))といい、一般に、積層ゴムが使われています。
アイソレーターは、上下方向には高い剛性を持っていますが、免震効果はありません。
吸収機能は、ダンパー(減衰器)といい、粘性体・鋼材・鉛等が使われています。
免震構造では、上部構造全体の重心と免震部材全体の剛心とのずれを極力小さくすることで、ねじれの影響を少なくします。
地下部分に免震装置を設置した場合には、免震構造の機能を発揮するために、建物と周囲地盤との間にはクリアランスが必要です。
以上が、鉄骨構造などについての内容でした。
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